2019年に観てよかった映画
新作旧作問わず、順不同に。メジャーなやつ多し。アマゾンプライムで観られるやつもあるので年末年始のお供に。
・プロメア
やたら熱量が多い製作陣によるやたら熱量の多いアニメ。とりあえず観たら元気になるタイプの映画。アニメ1クール作品を2時間に圧縮したような密度の濃さがある。絵作りがとんでもなく綺麗でセンスがある。
ブームとなった『ジョーカー』が相当参考にしたと思われる映画。ジョーカーが好きな方はこちらも。プロットがほとんど同じで、売れないコメディアンがテレビ出演のメジャーデビューを目指すために奮闘する。マーティン・スコセッシ監督が描く狂人は観ていて心臓に悪い(おれはこの監督の作品にわりと共感性羞恥心を感じてしまう) 。
・トイストーリー4
トイ・ストーリー4 MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2019/11/02
- メディア: Blu-ray
安定のピクサー。別の記事(ネタバレ有り)でも書いたが、『おもちゃが飽きられる事』をテーマに描かれている。賛否両論あるが自分としてはわりと好みの映画であった。
・ファーストマン
おれの大好きな『ラ・ラ・ランド』監督による実話を基にしたフィクション映画。前2作のような派手さはなく、むしろ地味である。ただ、月に行くという事に関する主人公の、静かで冷たく恐ろしい狂気が凄まじい。月面着陸のシーンは視聴可能な一番大きいディスプレイで観て欲しい。
米選挙活動のロビイストという、日本ではあまりなじみの無い仕事を題材にした映画。銃規制法案を巡り『規制派』についた主人公があの手この手を使い勝利を目指していく。銀河英雄伝説のオーベルシュタインのように冷静で計算高く権謀術数を使いこなす主人公の格好良さよ。最後の展開と仕掛けまで含めて最高にスリリング。これはオススメ。
・グリーンブック
白人の運転手と黒人のピアニストの交流を描いた映画。黒人差別を題材にしているが、優しいユーモアで包んでおり救いのある話になっている。アカデミー賞を穫るのもうなづける。最後の奥さんの一言がちょう最高。
映画『ジョーカー』感想
レイトショーで観に行った。
ゴッサムシティのダウンタウンで暮らす中年男アーサー。病気の母と同居しつつ道化の安仕事を請け生計を立てる傍ら、コメディアンを目指している。彼自身も『突然笑いの発作が起こる』という持病を抱えていた。ある日仕事仲間から護身用として銃を渡されるが…。
若干のネタバレを含む。
相当面白かった。が、かなり鬱テイストの強い映画だといえる。ラースフォントリアーの映画を観ているかのようだった、と書けば伝わる人には伝わるかもしれない(闇堕ちしたまま戻らなかった『ブラック・スワン』のよう)。ひどい生い立ち、取り巻く環境と現況、明らかに希望のない展開。ごく個人的に決定的につらかったのは『病気の母が居る』という設定一点。このアーサーは自分の母を普通の親子として普通に愛しているのだ。これはつらい。だってこれただの人間が悪役になるまでの映画だぜ?そんなアーサーが母親の入浴を手伝い、背中をゴシゴシ洗っているのだ。悲しくて仕方がない。この母親がこの映画の中でどうなってしまうかというと、どうなってしまうかに決まっている(いちおうネタバレに配慮してぼかす)。それが冒頭でいきなりわかりきってしまうのがつらい。
お話の展開としてはおおむね直線的で、特に複雑なプロットはない。導入は丁寧だがやや
退屈でもある。ただの人間がジョーカーとして覚醒する(とはいってもジョーカーは何か超能力や特殊な身体能力を得るわけではないが)までの話なので、ただでさえつらい境遇が話が進むにつれて輪をかけてつらくなっていくというところだ。中盤で明かされるアーサーの出自をはじめとし、治らない病気、母親の病気や彼女の過去、さっぱり大衆に受けないコメディ、努力を嘲笑う聴衆。アーサーが懸命によく生きようとする一方、どんどん歪んだ方向へ進まされてゆく。
しかし彼はその運命に諦観することなく、自身の人生の意味を問い続けながら(一般的に悪とされる)悪への道へ邁進していく。この不気味なポジティブさ、ピュアさ、諦めないメンタルという面を切り取れば、なるほど一部の感想に述べられるような『スカッとする成功物語』にも見える。特に、終盤の最後のチャンスをものにして大成を掴む流れはサクセスストーリーそのものである。彼の人生が『転落』でもあり『成功』でもある、その同時性が面白いともいえる。
アーサー(ジョーカー)は社会に恨みがあるわけでも、環境に恨みがあるわけでもない。金儲けがしたいわけでも悪として名をなしたいわけでもない。世界を征服したいわけでもない。そういった頓着の無さがジョーカーの、ほかの悪役と違う無二の個性でもある。自分自身の人生を『悲劇』ではなく『喜劇だ』としていること、そして命の価値を自他共に最低に置いていること。いわゆる昨今よく聞かれる『無敵の人』に重なるパーソナリティである。
この映画を観ていて『ファイト・クラブ』にも少し重なるものを感じた(作劇上『ファイト・クラブ』ととても似た演出が一部ある)。何も持たない男が「物質社会なんかクソ食らえ」と混沌を企てるという部分は共通している。ジョーカーに憧れるやつらは、タイラーダーデンに憧れるスペースモンキーと重なる。
アーサー役のホアキン・フェニックスの演技は素晴らしい。ピュアなアーサーから不気味なジョーカーまで完璧に演じていると感じる。ダークナイトのジョーカーに比べるとややウェットな感じがある。
現代の個人が抱える闇に切り込んだ作品であると思うので、気になる人は早めに映画館で観るのがオススメ。
『トイストーリー4』ネタバレ有り感想
友達と観に行った。以下ネタバレ有り感想。
ボニーの家に引き取られたウッディ達。ある日ボニーが幼稚園で作った人形フォーキーが仲間に加わるが、なぜか自分を人形ではなく『ゴミ』だと思い込んでいる。ウッディがフォーキーに手を焼いている最中、ボニーの家族が旅行に行く事になりおもちゃたち全員でついていくが…。
相変わらずテンポが良い。緩急のバランスも絶妙で、派手なシーン、しんみりするシーン、ホラーなシーンなどを良いタイミングで入れてくる。トイストーリー全般に感じる事だが、一度見始めると最後まで観てしまうのにぜんぜん疲れない。もはや空恐ろしいレベルの構成になっていると思う。
さて、自分はあまりトイストーリーシリーズに思い入れが無いが4はかなり良い出来だったと思った。だが、テーマというか主張したい事がわからない。わからない理由の一つに、主要キャラの振る舞い方がかなり異なっている事があると思う(ウッディ、フォーキー、ボー)。
3は明確だった。3は『おもちゃは卒業するものである』という極めて明確なテーマを最後にもってきて話を纏めていた。4はその辺り、主人公のラストの選択にイマイチ説得力がなくふわふわしている。これを見て観客にどう感じてほしいん?という感じである。
なのだが、それでも自分は4は良かったと思うのは、結構いいテーマに切り込んでいる兆しが感じられたからだ。
3のテーマの一つに『子供とおもちゃの別れ』があると思うが、4は『飽きられるおもちゃ、気に入られないおもちゃの行く末』を描いていると感じた。
ウッディは冒頭で既に新しい持ち主のボニーから飽きられている描写があ。また、敵役となる人形ギャビーもまた、持ち主ハーモニーに受け入れて貰おうと努力するがその想いは打ち砕かれる。3でも確かにウッディがアンディに飽きられている描写はある。ただそれは、おもちゃ全般が飽きられているのであり、アンディの年齢を考えれば致し方ないという諦めや救いがある。一方今回の4ではボニーはまだ人形遊びが好きな年頃だし、ハーモニーも同じような年頃の少女だ。まだ対象年齢にも関わらず『飽きる』描写を主人公と敵ライバル両方に経験させるのはそういう意図があるのだと思う。
そりゃいつかはおもちゃも飽きるよね人間だもの、という、身も蓋もない現実に切り込んでいる。
それでも新しい居場所(ウッディ・ボーの様に人間に依存しないで生きる、ギャビーの最後のように受け入れてくれる人間を見つける)をおもちゃ自身が見つけていく所に救いがある(ただこの辺りに4が賛否両論である原因があると思う)。
なのだが、この流れでいくならば、ボニーが作り出したフォーキーも当然いつか飽きられるはずなのだ(ましてや、あの造型ならば相当飽きられるのが早いのではないか。アンディのように大学生まで、という訳にはいくまい)。フォーキーが産まれてから何度もゴミ箱に入ろうとするのも宿命的というか暗示的な面があると思う。
であるならば、ウッディはフォーキーとの別れ際に『飽きられたり捨てられる』ことについてのアドバイスをすべきではなかったか。特に今回のウッディの役割は父性的なものが大きい(ボニーを心配し、フォーキーを諭す)のでなおさらである。綺麗な別れも飽きられたことも経験しているウッディだからこそ、それをフォーキーへ伝えるができたと思うのだが、その辺りは特に触れられること無く終わった。ここを掘り下げてもらったらこの4で言いたいことがかなり締まったと思う。
とはいえ全体的に完成度が恐ろしく高い映画なので気軽に観ても値段以上に楽しめると思う。おススメの映画である。
★★★★☆(かなり良かった)
63日でストップ
先週の日曜で連続ブログ更新記録が途切れた。63日だった。続けることそれ自体が目的であったこともあり、気持ちの上では100日くらいまでは連続でやりたかったので残念だ。
<更新が途切れた直接的な理由>
・生活上ブログを更新することの優先順位が下がった
(仕事とプライベート両方の面でここ1ヶ月くらい忙しくなりすぎてしまい、今後の見通しも同様のため)
・ブログ以外で文章を書く必要が出てきた。
(1記事にかける時間が短ければ両立もできようが、できないので、これは自分のスキルの問題。スキルが上がらなかったこと自体もまた問題)
<課題点>
・毎日書いていたのにもかかわらず、文章を書く能力が上がった実感があまりなかった。
(質の問題。これは、文章を書く上で他ブログや作家の文章を参考にせず、自分で書きたいように書いた所為だと思う。)
・文章がたいして上手くないのにアウトプットにやたら時間が掛かる。
(スピードの問題。アウトプットが進まないせいでインプットに時間を割けないという悪循環もしばしば。)
<良かった点>
・当初目標だった1ヶ月より大幅に長く続けることができた。
(完成形を目指すよりとにかくアップするスタンスが功奏した)
・ウケる記事とそうでない記事のポイントがなんとなくわかった。
(タイトルがかなり重要)
・いいねやRTやスターがつくと嬉しかった。
(知り合い以外の人からのスターとかも嬉しい)
・毎日更新するために頭を捻ることでアンテナが広がった。
(ネットでネタを拾うよりリアルの体験の方が書きたい事が見つかりやすい)
・ネタバレとかはあまり気にする必要がないことがわかった。
(読み手の反応は可視化されないので、そこに気を遣う意味がない)
今後も引き続き更新していくつもりだが、ペースは落ちると思う。
振り返りのスピード
先日、自分にとっては初めてとなるイベントを運営した。来ていただいた人たちには本当に感謝しかない。マーケティングからオペレーションまで新しい体験だったので得るものもとても多く、はじめるまで怖かったのは正直な気持ちだがやって本当に良かったなと思う。
今回のイベントは共同の発案者がもう一人居たのだが、会場の後片付けを終えたあとに二人で近くのファミレスに行きすぐ反省会(振り返り)を行った。良かったことと課題点、次回のイベントをどうするのかといった3つのテーマで思いつくままに出し合った。二人で意見を出し合うと、二人が共通して感じた意見感想だけでなく、異なった意見感想も出てきたので、そこでもお互いに新しい発見がありとても良かった。
こういった振り返りを、その日のうちにできたというのはすごく良かったと思う。理由は2つある。1つの理由は、ほんの数時間前の出来事を振り返ることが比較的たやすいということだ。お互いかなり細部まで思い出せるので、反省点の量と質が良くなる。これは一晩寝てしまってからではかなり忘れてしまう。(実際、その日に書いたメモをさっき見返してみたら忘れている点も多かった。)
もう1つは経験の熱量がまだ自分たちの中に残っているうちに振り返りができたことで、モチベーションが高い状態で次回のアイディアが浮かんでくることだ。これが1日2日でも過ぎていたら、その日より高いモチベーションで再び話し合うのには相当なパワー(と時間)が必要になるだろう。その日のうちに振り返ることでその日の勢いをそのまま活かせるという感じ。
そういうわけで、次にやるイベントでは振り返りを活かしてもっと良いものにしたいなと思う。
ネガティブな情報
人の第一印象は出会って6秒で決まるらしいと、会社の研修で習ったことがある。あ、良い人だな、とか、ちょっと変な人だな(マイルドな表現)、みたいなものは、その最初に受けた印象がかなり引っ張るらしい。その後に逆の印象を与えようと思ってもなかなか難しいという。まぁ、わざわざ相手に悪い印象を与えたい人は基本的にいないと思うので、良い印象を与えるためにはとにかく最初が肝心ですよ、ということだ。
こういうの、人間関係だけでなくコンテンツに対しても言えるなと思う。例えば自分は『進撃の巨人』が未だにあまり好きになれない(たまに読むんだけれど)。その理由が、最初テレビで、いかにもこいつ漫画読んだことねーだろーなというおばちゃん評論家が「この漫画が今とても面白いんです!!!!!!111」みたいなことを言っていて、あーこれマジ…広告代理店入ってるわ…マジ…となったからである。しかもそういう情報を仕入れてしまったあとだと、どうしてもハードルが上がった状態でそのコンテンツと向き合わざるを得ない。それもお互いにとってもったいないことだ。
普段の生活(本当は『人生』と書いた方がいいのだろうが、『人生』ってなんかでかいのでイヤなのだ)、どう考えても楽しめるものが多いほうが楽しいので、なるべくコンテンツに関してはネガティブな情報を仕入れないようにしたほうがいい気がする。
映画『ROOM』感想
アマゾンプライムで観た。今は有料になっているようだ。
『部屋』に居るお母さんと子供。一見楽しそうに暮らしているも、母親の様子がおかしい。どうやら監禁されているようだ。冷蔵庫、ベッド、洗面所、台所、トイレ。必要なものはなんでも揃っている。たまに「あいつ」が顔を見せにくる。母親は、子供と協力しなんとか脱出しようとするが…
タイトルが示す通り、部屋が重要な意味を持つ映画である。物理的にももちろんそうだし、精神的な意味合いにおいてもそうだ。
最初は、監禁から脱出してハッピーエンドになる物語だと思って観ていたが、それだけではなかった。意外と脱出パートは短く、脱出したあとにこの映画の本当に伝えたいことが続く。いわば、ハッピーエンドの続きの話と言っていい。元の暮らしに戻るということはどういうことなのか。子供にとっては、物心ついて頃から過ごしていた場所があの監禁されていた部屋であり、世界には母親と「あいつ」しかおらず、部屋の中だけが世界の全てだった。その世界が突然拓けていくとどうなるのか。そして、2人きりでは見えなかった、あるいは監禁されていたからこそ、見過ごされていた問題が表出してくる。
演出は最小限で、地味な映画だが、緊張感が持続して最後まで飽きずに見ることができた。家族が自分たちの居場所を取り戻す話。
評価:なかなか良かった(★★★)