新しい道路

家の近くに新しい道路が出来ている。街と街をつなぐような大きい道路なので、今まであった家並みのグリッドを無視して斜めにズドンと通っている。この道路ができれば渋滞がけっこう緩和されそうで、悪いことはなさそうだ。車の売上は下降の一途をたどっているのに、道路はどんどん増えていく。道路が減ることはないよなと思う。

 

新しい道路ができてしまうと、途端に前の景色はどうだったかを忘れてしまうなと思う。思い出せなくなる。街並みや、雰囲気は、すべて新しい道路に上書きされる。その景色こそが、まるで以前からあったかのように現在に馴染んでいるので、その目の前の現在だけではなく過去までも上書きしてしまうことがある。そうやって過去を忘れてしまったり記憶が変わったりしてしまう前に、動画でも写真でも撮っておけばよかったと思うこともあるのが、そういうことを思うのは、常にすっかり変わってしまったあとだ。